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フリーランスとして仕事を受ける場合や、企業・個人事業主がフリーランスへ仕事を依頼する場合には、業務内容や報酬、契約期間などの条件を明確にしておくことが重要です。
口頭だけで仕事を始めてしまうと、
どこまでが依頼された業務なのか
追加作業について報酬が発生するのか
経費は誰が負担するのか
成果物の著作権は誰に帰属するのか
契約を途中で終了できるのか
といった点について、後から認識の違いが生じることがあります。
また、フリーランスとの取引では、2024年11月1日に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)への対応も必要です。
この記事では、フリーランスとの取引で作成することの多い「業務委託契約書」について、どのような内容を定めておくべきか行政書士が解説します。
※この記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。
フリーランスとの取引では契約書を作った方がいい?
フリーランスとの取引について、すべての場合に「業務委託契約書」という名称の契約書を作らなければ契約が成立しないわけではありません。
しかし、業務内容や報酬、責任の範囲などについて後からトラブルになることを防ぐためにも、取引条件を契約書として明確にしておくことをおすすめします。
特に、継続的に仕事を依頼する場合や、顧客情報・営業情報などを取り扱う場合、成果物が発生する場合などには、あらかじめ当事者間のルールを決めておくことが重要です。
フリーランス法では取引条件の明示が必要
フリーランス法の対象となる業務委託では、発注事業者はフリーランスへ業務を委託した際、直ちに書面またはメール、SNSのメッセージなどの電磁的方法により一定の取引条件を明示する必要があります。
口頭だけでの明示は認められていません。
明示する事項には、主に次のようなものがあります。
発注事業者とフリーランスの名称
業務委託をした日
委託する業務の内容
業務を行う期日
業務を行う場所
報酬の額
報酬の支払期日
などです。
これらの事項を業務委託契約書で明示することもできます。
ただし、契約書を締結していれば必ずフリーランス法上の明示義務を満たすわけではありません。
契約書に必要な事項がすべて記載されていない場合には、発注書やメールなどによって不足している条件を別途明示する必要があります。
フリーランス向け業務委託契約書に定めたい内容
フリーランスとの業務委託契約書にどのような条項が必要になるかは、仕事内容や取引形態によって異なります。
ここからは、業務委託契約書で特に確認しておきたい代表的な項目を紹介します。
1.委託する業務の内容
まず重要なのが、「何を依頼する契約なのか」を明確にすることです。
例えば、
「店舗業務全般」
「Web関係の業務」
などとだけ記載すると、どこまでが契約上の業務なのか分からなくなる可能性があります。
そのため、
具体的な業務内容
業務に付随して行う作業
業務を行う場所
納期や実施時期
などを、実際の取引に合わせて定めます。
業務の範囲を明確にしておけば、「この仕事まで報酬に含まれていると思っていた」といった認識の違いを防ぎやすくなります。
2.独立した事業者として業務を行うこと
フリーランスとの契約では、発注者と受注者との関係についても整理しておくことが重要です。
業務委託契約であれば、フリーランスが独立した事業者として業務を行い、原則として自己の責任と裁量によって業務を遂行することなどを確認しておくことが考えられます。
ただし、契約書に「業務委託契約」と記載すれば、それだけで雇用契約ではなくなるわけではありません。
実際の働き方が労働者に該当するかどうかは、契約書の名称だけではなく、実際の業務の実態などを踏まえて判断されます。
そのため、契約書の内容と実際の働き方が大きく食い違わないようにすることも重要です。
3.報酬・経費・支払日
フリーランスとの契約で、特にトラブルになりやすいのがお金に関する部分です。
業務委託契約書では、
報酬額
報酬の計算方法
締日
支払日
経費を誰が負担するのか
振込手数料を誰が負担するのか
などを明確にしておきます。
報酬については、月額固定、案件ごとの固定額、時間単価、売上に応じた歩合制など、仕事内容によってさまざまな定め方があります。
フリーランス法が適用される場合には、原則として、物品等を受領した日や役務の提供を受けた日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に報酬の支払期日を定め、その期日までに支払う必要があります。
4.再委託できるか
フリーランス本人の技術や経験を評価して仕事を依頼する場合には、他の人へ仕事を任せられてしまうと困ることがあります。
そのため、
再委託を認める
発注者の事前承諾がある場合だけ認める
再委託を禁止する
といったルールを定めておくことが考えられます。
特に、専門的な技術や資格、本人との信頼関係を前提として仕事を依頼する場合には、再委託に関する条項を確認しておきましょう。
5.顧客から苦情などがあった場合の対応
店舗などでフリーランスがお客様へ直接サービスを提供する場合には、問い合わせや苦情、事故などが発生する可能性もあります。
このような業務では、
苦情等を受けた場合に誰へ報告するのか
誰が対応するのか
対応にかかった費用を誰が負担するのか
などについて定めておくことも考えられます。
どちらに原因があるのかによって責任の所在が変わることもあるため、実際の業務内容に合わせてルールを設計することが重要です。
6.資料・顧客情報などの管理
フリーランスへ仕事を依頼すると、会社の資料や顧客情報、業務用の機器などを渡すことがあります。
その場合には、
業務以外の目的で使用しない
無断で複製しない
第三者へ渡さない
不要になった場合には返還または処分する
といったルールを契約書で定めておくことが考えられます。
特に顧客情報などを取り扱う業務では、情報管理について明確にしておくことが重要です。
7.著作権などの知的財産権
デザイン、文章、イラスト、写真、動画、プログラムなどの制作をフリーランスへ依頼する場合には、著作権の扱いも重要です。
「報酬を支払ったのだから、成果物の著作権も当然に発注者のものになる」と考えてしまうと、後からトラブルになる可能性があります。
そのため、
著作権を発注者へ譲渡するのか
フリーランス側に残すのか
発注者へ利用を許諾するのか
著作者人格権をどのように扱うのか
などを契約内容に応じて検討します。
著作権を譲渡する場合には、著作権法第27条・第28条の権利についても含めるのかなど、契約書の記載方法にも注意が必要です。
8.秘密保持
フリーランスが業務を行う過程では、
顧客情報
営業情報
価格情報
技術情報
社内資料
などを知ることがあります。
こうした情報が外部へ漏えいしたり、別の目的で利用されたりすることを防ぐため、秘密保持条項を設けることがあります。
秘密保持条項では、
何を秘密情報とするのか
第三者への開示を禁止すること
業務以外の目的で利用しないこと
秘密情報に該当しない情報
などを定めておくことが考えられます。
9.損害賠償
契約違反などによって相手方に損害を与えた場合に備えて、損害賠償について定めることもあります。
例えば、当事者の故意または過失によって相手方に損害を与えた場合に、その損害を賠償する旨を定めます。
ただし、発生する可能性のある損害は仕事内容によって大きく異なります。
そのため、
どのような場合に損害賠償責任を負うのか
賠償する損害の範囲
損害賠償額の上限を設定するのか
などについて、業務内容に応じて検討する必要があります。
10.途中で契約を終了できるか
継続的な業務委託では、契約期間の途中で取引を終了したい事情が生じることもあります。
そのため、
契約期間途中でも解約できるのか
何日前までに通知するのか
書面やメールなど、どのような方法で通知するのか
を契約書で決めておくことが考えられます。
また、契約違反や重大な法令違反、支払停止などがあった場合に契約を解除できる旨についても、中途解約とは別に定めておくことがあります。
11.フリーランス法による中途解除・不更新のルール
フリーランスとの契約を終了する場合には、契約書だけではなくフリーランス法にも注意が必要です。
一定の発注事業者がフリーランスに対して6か月以上の業務委託をしている場合、その契約を中途解除したり更新しなかったりするときは、原則として少なくとも30日前までに予告する必要があります。
また、予告後から契約満了までの間にフリーランスから解除・不更新の理由を求められた場合には、原則として遅滞なくその理由を開示する必要があります。
継続的なフリーランスとの契約では、契約書に定めた解約条件だけを確認するのではなく、フリーランス法の適用についても確認しておきましょう。
12.契約期間・自動更新
継続的に仕事を依頼する場合には、契約期間についても定めておきます。
例えば、
3か月
6か月
1年間
期間の定めなし
などが考えられます。
また、自動更新とする場合には、
「契約期間満了日の30日前までに更新を拒絶する旨の通知がなければ、さらに同一期間更新する」
など、更新の条件も明確にしておくことが重要です。
13.その他の条項
業務委託契約書には、このほかにも取引内容に応じて、
反社会的勢力の排除
契約上の地位や権利義務の譲渡禁止
契約内容に疑義が生じた場合の協議
紛争が生じた場合の合意管轄
などを定めることがあります。
すべての契約書に同じ条項を入れればよいわけではなく、実際の仕事内容や取引関係に合わせて必要な条項を検討することが重要です。
フリーランス法では契約書を作るだけでは十分とは限らない
フリーランス法への対応で注意したいのが、「業務委託契約書を作れば、それだけですべての義務を満たす」とは限らないことです。
公正取引委員会も、契約書を締結していても、フリーランス法で明示が求められている事項がすべて記載されていなければ、取引条件の明示としては不十分であるとしています。
例えば、基本となる業務委託契約書を締結したうえで、個々の仕事について、
業務内容
納期
報酬
などを発注書やメールで決める場合もあります。
このような場合には、基本契約書だけでなく、個別の発注内容も含めてフリーランス法上必要な事項が明示されているか確認する必要があります。
また、一定期間以上の業務委託では、受領拒否、報酬の減額、買いたたき、不当なやり直しなどの禁止行為についても注意が必要です。
フリーランス向け業務委託契約書は仕事内容に合わせて作成する
フリーランスとの業務委託契約書では、
業務内容
報酬・経費・支払条件
再委託
顧客対応
資料・情報の管理
著作権などの権利関係
秘密保持
損害賠償
中途解約・解除
契約期間・更新
フリーランス法への対応
など、さまざまな事項を検討する必要があります。
ただし、必要な条項は仕事内容によって異なります。
例えば、デザイナーやライターなど、成果物を作成する業務では著作権の取り扱いが重要になります。
一方、店舗で接客や施術などを行うフリーランスとの契約では、施設の利用方法や顧客対応、事故や苦情が発生した場合の責任分担などが重要になることもあります。
そのため、インターネット上に公開されている業務委託契約書のひな形をそのまま使用するのではなく、実際の仕事内容や取引の流れに合わせて内容を修正することが大切です。
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