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個人間で軽自動車を売買する場合、売買代金を支払って車両を引き渡すだけでなく、名義変更や車両の状態、軽自動車税、保管場所の届出などについても、売主と買主の間で確認しておくことが大切です。

口頭だけで売買条件を決めてしまうと、「いつまでに名義変更するのか」「事故歴や不具合についてどこまで説明を受けていたのか」「引渡し後に故障が見つかった場合はどうするのか」といった点で、後から認識の違いが生じる可能性があります。

そこで、フリューゲル行政書士事務所では、軽自動車の個人間売買を想定した「自動車売買契約書(個人間売買用)」のひな形を作成しました。

今回のひな形では、車両番号、車名、型式、車台番号、初度検査年月、車検有効期間満了日、契約時走行距離などを記載できるようにしています。

この記事では、実際のひな形に沿って、軽自動車の自動車売買契約書に記載しておきたい内容と注意点を解説します。

軽自動車の自動車売買契約書ひな形

今回公開するひな形は、個人が所有する中古の軽自動車を、別の個人へ売却する場合を想定しています。

売買の対象となる軽自動車、売買代金、引渡し、所有権の移転、名義変更、車両状態の告知、契約不適合、軽自動車税や諸費用などについて一通り定められる内容としています。

※本ひな形は個人間における中古軽自動車の売買を想定したものです。自動車販売事業者が消費者に自動車を販売する場合などには、そのまま使用することを想定していません。

普通自動車を個人間で売買する場合は、「自動車売買契約書のひな形(普通自動車・個人間売買用)|書き方と注意点を行政書士が解説」をご覧ください。

軽自動車を個人売買するときに契約書を作成する理由

軽自動車の売買契約についても、必ずしも契約書を作成しなければ契約が成立しないわけではありません。

しかし、自動車は比較的高額な財産であり、売買後には名義変更などの手続も必要です。軽自動車検査協会も、軽自動車を売買・譲渡した場合には名義変更の手続が必要であると案内しています。

また、中古の軽自動車は、年式、走行距離、事故歴、修復歴、故障、不具合など、一台ごとに状態が異なります。

そのため、個人間で軽自動車を売買するときは、売主と買主が合意した内容を書面に残しておくことで、後日の認識の違いを防ぎやすくなります。

軽自動車の売買契約書に記載しておきたい内容

今回のひな形では、個人間で軽自動車を売買するときに確認しておきたい事項を第1条から第16条までにまとめています。

ここからは、それぞれの内容を順番に解説します。

売買する軽自動車を特定する

第1条では、売買の対象となる軽自動車を特定します。

今回のひな形では、次の項目を記載できるようにしています。

  • 車両番号

  • 車名

  • 型式

  • 車台番号

  • 初度検査年月

  • 車検有効期間満了日

  • 契約時走行距離

普通自動車版では「自動車登録番号」「初度登録年月」としていますが、軽自動車版では「車両番号」「初度検査年月」としている点も違いの一つです。

特に車台番号は、売買する軽自動車を特定する重要な情報です。

また、中古車では走行距離も車両の状態や価値を判断する要素となるため、契約時点の走行距離についても記録する形としています。

売買代金に何が含まれるのかを決める

第2条では、軽自動車の売買代金を記載します。

今回のひな形では、売買代金の中に、

  • リサイクル料金の預託金相当額

  • 自賠責保険の未経過期間に相当する保険料相当額

を含め、売主と買主の間では別途精算しない形としています。

個人間売買では、車両本体の価格だけを決めて、リサイクル料金や自賠責保険の未経過分をどう扱うのかが曖昧になってしまうことも考えられます。

売買代金に何が含まれているのかを契約書で明確にしておくことが大切です。

売買代金の支払方法を決める

第3条では、売買代金の支払方法について定めています。

今回のひな形では、軽自動車の引渡し完了と引き換えに、買主が売主の指定する銀行口座へ売買代金を振り込む形を基本としています。

振込手数料は買主負担です。

分割払いとする場合には、第13条の特約事項に支払額や支払期日を記載できるようにしています。

個人間売買では、「代金をいつ支払うのか」「軽自動車をいつ引き渡すのか」についても明確にしておきましょう。

引渡日・引渡場所と車両状態を確認する

第4条では、軽自動車の引渡日と引渡場所を記載します。

また、買主は軽自動車の引渡しの際に、外観、内装、装備、走行状態その他の状態を可能な範囲で確認することとしています。

契約前に車両を確認していたとしても、契約から引渡しまでの間に状態が変わっている可能性があります。

そのため、実際に軽自動車を受け取る際にも、傷、内装、装備、不具合などについて改めて確認しておくことが大切です。

所有権が移転する時期を決める

今回のひな形では、買主による売買代金全額の支払いが完了した時点で、軽自動車の所有権が売主から買主へ移転することとしています。

車両の「引渡し」と「所有権の移転」は必ずしも同じ意味ではありません。

いつ所有権が移転するのかを契約書で明確にしておくことで、代金の支払いと軽自動車の権利関係を整理できます。

引渡し前後の危険負担を決める

契約を締結してから実際に軽自動車を引き渡すまでの間に、災害など売主・買主のどちらにも責任のない事情によって、車両が滅失・損傷する可能性もあります。

今回のひな形では、そのような損害について、

  • 引渡し完了前は売主

  • 引渡し完了後は買主

が負担することとしています。

軽自動車であっても、自動車は高額な財産です。

どの時点から買主が車両についてのリスクを負担するのかを明確にしておくことには意味があります。

名義変更に必要な書類を売主から買主へ渡す

軽自動車を売買した場合には、車両そのものを受け渡すだけでなく、軽自動車検査協会で名義変更の手続を行います。

軽自動車検査協会では、売買や譲渡による名義変更について、自動車検査証の原本や、新たな使用者の住所を証する書面など、状況に応じた書類を案内しています。

今回のひな形では、名義変更その他必要な手続に必要となる書類のうち、売主が取得、作成または交付すべき書類を、引渡し日までに買主へ交付することとしています。

普通自動車と軽自動車では名義変更に使用する書類が異なるため、普通自動車版のように譲渡証明書、印鑑証明書、委任状などを契約書上で一律に列挙するのではなく、軽自動車版では「甲が取得、作成又は交付すべき書類」という形にしています。

なお、今回公開している自動車売買契約書そのものが、軽自動車検査協会に提出する申請書その他所定の書類の代わりになるわけではありません。

軽自動車の名義変更は軽自動車検査協会で行う

今回のひな形では、買主が所有権を取得した日から15日以内に、軽自動車検査協会で自動車検査証の記録事項の変更、いわゆる名義変更その他必要な手続を完了することとしています。

軽自動車検査協会も、軽自動車を売買・譲渡した場合には名義変更が必要であり、新しい使用者が軽自動車を使用する場所を管轄する事務所・支所・分室で手続することを案内しています。

ただし、売主による必要書類の交付が遅れた場合など、買主の責任ではない事情によって手続ができない場合については、今回の契約書では例外としています。

また、名義変更後は、新しい自動車検査証など、名義変更が完了したことを確認できる資料の写しまたは画像を、買主から売主へ提示することとしています。

個人間売買では、車両を引き渡した後も名義が売主のまま残る状態を避けるためにも、名義変更が完了したことを売主側でも確認できるようにしておくことが大切です。

名義変更が終わるまで第三者への売却を制限する

今回のひな形では、名義変更が完了するまで、買主が軽自動車を第三者へ売却または譲渡しないこととしています。

名義変更をしないまま別の人へ転売されてしまうと、車検証上の所有者と実際の所有・使用関係がさらに複雑になる可能性があります。

ただし、売主があらかじめ承諾した場合は例外としています。

車検証上の所有者が売主本人か確認する

軽自動車についても、車両を売ろうとしている人と、自動車検査証上の所有者が同じとは限りません。

ローンなどによる所有権留保がある場合には、自動車販売店やローン会社などが所有者となっていることがあります。

軽自動車検査協会も、自動車検査証に記録された使用者と所有者が異なる場合には、あらかじめ所有者から記録事項変更についての同意を得たうえで名義変更を行う必要があると案内しています。

今回のひな形でも、売主が軽自動車を適法に売却する権限を有することを確認するとともに、所有権留保、質権、差押えなど、買主による所有権取得や名義変更を妨げる第三者の権利が存在しないことを確認する内容としています。

自動車検査証上の所有者が売主以外の場合には、引渡し及び名義変更に先立って、必要な所有者の承諾などを行うこととしています。

個人間で軽自動車を売買するときは、契約前に車検証を確認し、所有者が誰になっているのかを確認しておきましょう。

事故歴・修復歴・故障などを契約書に残す

中古の軽自動車を個人間で売買する場合、車両状態について売主と買主の認識が食い違うことがトラブルにつながる可能性があります。

今回のひな形では、売主が契約締結時に認識している、

  • 事故歴・修復歴

  • 冠水歴

  • 現在確認されている故障・不具合

  • 走行距離計の交換や走行距離に関する特記事項

  • その他買主の購入判断に重要な影響を与える事項

について、契約書上で告知できるようにしています。

事故歴・修復歴や冠水歴については、「なし」「あり」「不明」を選択したうえで、必要に応じて具体的な内容を書き込む形式です。

売主が認識している故障や不具合などがある場合には、口頭だけで伝えるのではなく、契約書に記載しておくことが重要です。

現状有姿と契約不適合について決める

今回のひな形では、買主が契約書に記載された軽自動車の状態や告知事項を確認したうえで、現状有姿で車両を買い受けることとしています。

また、

  • 第8条に記載された事項

  • 買主が契約時に認識していた事項

  • 中古自動車として通常想定される経年劣化や消耗

については、買主から売主へ修理、代金減額、損害賠償などを請求しない内容としています。

さらに、引渡し後に故障や不具合が判明した場合でも、売主が契約時に認識しておらず、契約上その性能や状態を保証していない場合には、売主が契約不適合責任を負わない内容としています。

一方で、売主が契約時に認識しながら買主へ告知しなかった重要な事実や、契約書または第13条の特約事項で明示的に保証した事項についてまで免責する内容にはしていません。

中古の軽自動車は一台ごとに状態が異なります。

単に「現状渡し」とするだけでなく、どのような状態の車両を売買することについて双方が合意したのかを契約書に残しておくことが大切です。

軽自動車税や名義変更費用の負担を決める

第10条では、軽自動車税種別割などの税金や、名義変更などに必要となる費用について定めています。

軽自動車税種別割は、毎年4月1日時点の所有者等に対して、使用の本拠の位置となっている市区町村から課税されます。

今回の契約書では、行政機関に対する法令上の納税義務については関係法令に従うこととしたうえで、売主と買主の間での軽自動車税等の精算について、

  • 売買代金に含めて別途精算しない

  • 買主から売主へ一定額を支払う

  • 売主から買主へ一定額を支払う

  • その他の方法

から選択できるようにしています。

また、別段の合意がない限り、名義変更、ナンバープレート、自動車保管場所の届出など、買主が軽自動車を自己の名義で使用するために必要となる手続の費用は買主が負担する内容としています。

軽自動車は地域によって保管場所の届出が必要

普通自動車と軽自動車では、保管場所に関する手続にも違いがあります。

普通自動車では、使用の本拠の位置の変更を伴う移転登録などでは、原則として保管場所証明を取得して登録手続で使用します。これに対して軽自動車では、対象地域において、新たに運行の用に供するときや、所有者・住所の変更などに伴って保管場所の位置が変更されたときなどに、警察署への保管場所届出が必要となります。地域によっては届出が不要な場合もあります。

そのため、今回の軽自動車版契約書でも、第10条の費用負担について「自動車保管場所の届出(必要な地域に限る。)」としています。

軽自動車を個人売買する場合は、名義変更だけでなく、新しい使用の本拠の位置で保管場所届出が必要となる地域かどうかも確認しておきましょう。

引渡し後の事故・交通違反について決める

軽自動車を引き渡してから名義変更が完了するまでの間に、買主が車両を使用することも考えられます。

今回のひな形では、引渡し後に買主または買主の許可を受けた人による車両の使用・管理によって発生した、

  • 交通事故

  • 交通違反

  • 駐車違反

  • 有料道路通行料金

などについて、買主が責任を負うこととしています。

また、売主に放置違反金や通行料金などの金銭的負担が生じた場合についても、買主が負担する内容としています。

買主には、軽自動車を運行する前に自賠責保険の有効期間などを確認し、必要に応じて任意自動車保険への加入や車両入替などの手続を行うことも求めています。

個別の約束は特約事項に記載する

軽自動車の状態や売買条件は一台ごとに異なります。

例えば、

  • 売買代金を分割して支払う

  • 引渡しまでに特定の部品を交換する

  • 特定の装備について正常に作動することを売主が保証する

など、個別の約束がある場合には、第13条の特約事項に記載することができます。

重要な約束については口頭だけで済ませず、契約書に残しておくことをおすすめします。

普通自動車と軽自動車では売買後の手続が異なる

普通自動車と軽自動車は、個人間売買で確認しておきたい契約上のポイントには共通する部分が多い一方、売買後の行政手続は同じではありません。

普通自動車では運輸支局等で移転登録を行いますが、軽自動車では軽自動車検査協会で名義変更を行います。軽自動車検査協会では、名義変更の申請手数料は無料と案内されています。

また、保管場所についても、普通自動車の保管場所証明と、軽自動車の保管場所届出では手続の仕組みが異なります。

普通自動車を売買する場合については、「自動車売買契約書のひな形(普通自動車・個人間売買用)|書き方と注意点を行政書士が解説」で詳しく解説しています。

軽自動車の自動車売買契約書を使用するときの注意点

今回公開している契約書は、一般的な個人間での中古軽自動車の売買を想定したひな形です。

実際の売買では、

  • 車検証上の所有者が売主と異なる

  • ローンの所有権留保が残っている

  • 売買代金を分割払いにする

  • 車両に大きな故障や修復歴がある

  • 売主が特定の性能や状態を保証する

  • 遠方の相手と売買する

など、個別の事情がある場合もあります。

特に、車検証上の使用者と所有者が異なる場合には、軽自動車検査協会も、所有者の同意を得たうえで名義変更を行うよう案内しています。

個別の事情がある場合には、ひな形をそのまま使用するのではなく、実際の取引条件に合わせて契約内容を調整することが必要です。

まとめ

軽自動車を個人間で売買するときは、売買代金だけでなく、引渡し、名義変更、車両状態、軽自動車税、保管場所届出などについても、売主と買主の間で明確にしておくことが大切です。

特に確認しておきたいのは、

  • 売買する軽自動車の特定

  • 売買代金と支払方法

  • 引渡日と引渡場所

  • 所有権が移転する時期

  • 名義変更に必要な書類

  • 名義変更を行う時期

  • 車検証上の所有者

  • 事故歴・修復歴・故障等の告知

  • 現状有姿と契約不適合

  • 軽自動車税や諸費用の負担

  • 保管場所届出の要否

  • 引渡し後の事故や交通違反

  • 個別の特約事項

などです。

個人間の軽自動車売買では、売主と買主がお互いに「分かっているつもり」で手続を進めると、後になって認識の違いが表面化することがあります。

車両の状態、代金、引渡し、名義変更などについて契約時点で確認し、双方が合意した内容を自動車売買契約書として書面に残しておくことが、トラブルの防止につながります。

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